ARとは一体?
そもそもARとは一体何なのでしょうか。活用事例をチェックする前に、まずはARの基本情報を見ていきましょう。
AR=拡張現実の略称
ARとは拡張現実(Augmented Reality)の略称であり、人間が知覚する現実の環境をコンピュータによって拡張する技術やその環境のことを指します。
現実世界の情報にコンピュータを通じて得られた情報を追加する技術であり、ここ数年で多くの企業に活用され始めました。
ARとVRは異なるもの
ARと聞くとVRが思い浮かぶかもしれませんが、それぞれ異なるものであるため注意しましょう。
上記で述べたようにARは拡張現実という意味ですが、VRは仮想現実(Virtual Reality)の略称です。あくまでVRは名前どおりCGといった技術を活用してバーチャル世界を生み出すものであり、現実世界との関連性はありません。
一方でARはゴーグルやスマホなどを活用して現実世界に新しい情報を追加します。VRのように完全な仮想現実を作るわけではないため、間違えないようにしましょう。
なお、ARの上位概念として複合現実というものがあり、MR(Mixed Realityの略称)と呼ばれることもあります。
ARはさまざまゲームやアプリで活用されている
現在、ARはさまざまなゲームで活用されています。主なものとしては、「ポケモンGO!」や「ドラゴンクエストウォーク」、「妖怪ウォッチ ワールド」など。
特に「ポケモンGO!」は一時期ブームになったゲームであるため、利用したことのある方も多いでしょう。
また、ゲームだけではなくアプリにも活用されています。例として航空機の運航状況やルートなどがわかる「Flightradar24」の場合、ARを起動させてカメラを開くと航空機がいるとされる場所にマークをつけてくれます。
ARを企業が活用するメリット
ここでは、「自社でもARを導入できるのでは?」と感じている方に向けて、ARを企業が活用するメリットを解説していきます。
情報の可視化により理解を深めやすくなる
ARの最大の特長は「目の前の現実に情報を重ねて表示できる」点です。紙やモニター上では理解しづらい立体的な構造やプロセスも、ARを使えば3Dで直感的に把握できます。
例えば、建設現場では、完成予定の建物をARで表示することで、周囲の景観や配置をその場で確認が可能です。製造業では、複雑な機械の分解・組立手順をAR表示で可視化することで、作業ミスの防止や教育時間の短縮につながります。
可視化によって「見て理解できる」環境を作ることは、業務の効率化だけでなく、トラブルの予防にも大きく貢献します。
顧客体験の向上につながる
ARは企業が提供する商品やサービスに体験という価値を追加できます。特に小売業や観光業では、ARを使ったサービスによって顧客との接点を深め、競合との差別化を図ることが可能です。
例えば、自宅の空間にARで家具を配置してサイズ感やデザインを確認できれば、来店前の不安を解消できます。観光地では、スマートグラスを使って現地の歴史や自然をARでガイドすることで、訪問者により印象的な体験を与えられます。
リアルとデジタルが融合した「拡張体験」は、企業ブランドの記憶にも残りやすく、リピートや口コミの促進にもつながります。
作業効率や教育コストの大幅な削減が可能
ARを活用することで、従業員教育や作業指示の効率化も図れます。例えば、物流業界では、ARグラスを通してピッキング場所を指示し、正確かつ迅速な作業を実現している企業も存在します。
製造現場では、ARで組立手順を逐次表示することで新人教育の期間を短縮したり、熟練者でなくても正確な作業をこなせたりするようになります。マニュアルを読む時間や研修担当者の負担も減り、結果的に全体の作業効率が向上します。
また、遠隔地からARを通じて作業支援やトラブル対応を行うといったリモートサポートの仕組みも注目されています。現地に行かずに専門家の指示が受けられることで、移動コストや対応時間の削減にもつながります。
マーケティングやプロモーションの幅が広がる
ARを活用すれば、従来の広告や販促施策に新たな視点を加えることができます。例えば、ARチラシやARポスターでは、スマートフォンをかざすだけで商品の動画や購入ボタンが表示されるなど、紙媒体とデジタルを融合した体験を設計できます。
他にも、パッケージにARを仕込み、商品の使い方や製造工程を見せたり、キャラクターが登場してメッセージを届けたりと、記憶に残る演出が可能になります。
ARプロモーションは話題性も高いため、SNSなどでの拡散を狙うキャンペーンとも相性が良く、認知拡大や集客にも有効です。
国内での主なARの企業活用事例
ARを活用している企業は数多くありますが、どのように活かしているのでしょうか。そこでまずは、国内での活用事例を見ていきましょう。
戸田建設株式会社
戸田建設株式会社では、「建機AR」というものを使用しています。「建機AR」は、建機の3Dモデルと実際の建設工事現場の映像を重ね合わせて表示してくれます。
これにより実際の現場に建機を搬入できるのか判断することが可能。安全性も事前にチェックできるため、万が一の事故を未然に防ぎやすくなります。
株式会社無重力
株式会社無重力では、「せいくらべ」というアプリを運営しています。「せいくらべ」はAR機能を活用して子どもの成長を記録できるアプリであり、写真撮影と慎重の計測を同時に実行。ARで記録したデータをチェックでき、どのくらい子どもが成長したのか把握しやすくなります。
また、「せいくらべ」には共有機能も搭載。URLを共有するだけで、離れている祖父母に子どもの成長を伝えることもできます。
株式会社ウェザーニュース
天気予報でおなじみの株式会社ウェザーニュースでは、「ARお天気シミュレーター」というアプリを運営しています。「ARお天気シミュレーター」は、天気や災害、季節イベントをARで体感できるアプリであり、万が一の防災活動にも役立ちます。
2021年5月には「あじさいAR」と「ホタルAR」が追加され、さらに機能性も高まりました。「あじさいAR」と「ホタルAR」では、スマホのカメラ越しにARで再現されたあじさいやホタルを見ることができます。
株式会社中日新聞社
中日新聞社では、「東京AR」というアプリをリリースしています。「東京AR」では、東京新聞や中日新聞の紙面にスマホをかざすことで、動画や音声といった情報が得られるアプリです。
「東京AR」は都内における街の活性化を目指したアプリであり、紙面以外に屋外の対象物にも使えます。このように従来のメディアとARを活用する組み合わせもあり、さまざまな分野にARを取り入れられます。
一般財団法人 弘前市みどりの協会
一般財団法人の弘前市みどりの協会は、ARを活用した弘前公園スマートグラスガイドツアーを行っています。スマートグラスを着用して旅行を楽しむという内容であり、どんな季節でもスマートグラス越しに桜や紅葉が楽しめます。
その上、スマートグラスには同時翻訳機能も搭載。英語はもちろんのこと、中国語やタイ語、フランス語などにも対応しています。
海外での主なARの企業活用事例
ARは国内だけではなく、海外でも取り入れられています。これからARを活用しようと思っているのであれば、海外の事例もチェックしておきましょう。
Google
Googleでは、ARグラスとして「Google Glass」を開発し、実際に販売。2012年にプライバシーといった問題から批判された過去もありますが、現在でも開発を続けています。
「Google Glass」は一般向けのARグラスではなく、医療や農作業といった分野向けとなっています。実際に導入している企業もあり、これから日本でも広がっていくかもしれません。
DHL
上記で紹介した「Google Glass」を実際に導入している企業として、国際的な運輸企業であるDHLが挙げられます。DHLはピッキング作業で「Google Glass」を活用。「Google Glass」に作業指示を投影することで、作業の効率化につなげました。
DHLも含めて、流通や運輸業界では積極的にARが活用されています。特にピッキング作業やスピードと正確さが求められる一方で、ミスも多い業務でした。その問題を解決するためにARを取り入れることで大きく改善されました。
BBC
BBCでは、「Civilizations AR」というアプリをリリースしています。「Civilizations AR」は世界的に知られている遺跡を調べられるというアプリで、現地に足を運ばなくてもスマホでどんな遺跡なのかチェックできます。
「Civilizations AR」の場合は、英語での音声説明も搭載。実物大に再現された3Dの遺跡を見ながら、どのような歴史があるのか学べます。
IKEA
IKEAの場合、3Dの家具をバーチャル空間に設置できる「IKEA Place」というアプリをリリースしています。ARのおかげで実際に置いているかのような気分で操作できるため、サイズミスといった購入後のミスを未然に防ぐことができます。
Amazon
IKEAと似たようなケースとして、Amazonが挙げられます。AmazonにはARビュー対応の商品があり、実際の大きさをさまざまな方向からチェックできます。
こちらも購入後のミスを未然に防ぎやすくなる機能であり、ネットで買う上ではありがたい機能でしょう。
また、バーチャルでメイクができるという機能も専用のアプリに備わっています。買う前にどのようなメイクになるのかチェックできるため、自分に合う化粧品が選びやすくなっています。
リップのみの対応ですが、それでも18ブランド890点以上の商品が対応しており、ネットでリップを買うのが不安な方でも、安心して理想的な商品を見つけられるでしょう。
Microsoft
ARよりもさらに一歩進んだケースとして、Microsoftが挙げられます。Microsoftでは、「HoloLens 2」というMRグラスを開発・製造。
主に産業で利用されており、前作の「HoloLens」より快適性や没入感が向上しています。一般向けの商品ではありませんが、「HoloLens 2」のように一部の分野で活用されるARもあります。
ARはこれからも注目の存在
ARはさまざまな業界で用いられており、今後も注目の存在です。作業効率の改善や観光客の獲得など幅広い目的に活用できるため、あなたの会社でもARの導入を検討してみてはどうでしょうか。