地方を中心に少子高齢化が進み、シニア世代が多く住む地域が増加しています。そういった地域は地理的に隔離され、移動手段が限定的になり都市部とのネットワークが弱くなっています。
その反面インターネットが貴重な繋がりになります。またシニア世代は退職し資産の使い道に迷っていることから企業は消費者として重要な存在だと認識しています。
そこで目を付けたのがシニア向け動画の配信になります。今回はシニア向け動画の現状や作成方法などをご紹介していきます。
この記事は、こんな方におすすめです
- ✅ 高齢者向けサービスを展開しているが、動画での伝え方に悩んでいる
- ✅ 自治体や地域団体としてシニア層への情報発信を検討している
- ✅ シニア世代にも伝わる、見やすく分かりやすい動画を内製化したい
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シニア世代の定義
ではまずシニア世代の定義について軽くおさらいしていきましょう。
一言でシニア世代と言っても決まった定義があるわけではありません。似たような意味に高齢者などがありますが、一般的には世界保健機構が定める「65歳以上をシニアとする」が定義として広く認識されています。2025年時点でシニアの対象となる人口は、日本国内に約3,600万人います。
シニア世代におけるICT利用の現状とは?
2025年現在、シニア世代のICT利用は着実に進展しています。特にスマートフォンの普及率はこの数年で大きく伸びています。
これは、かつて高齢層に根強かったフィーチャーフォンからの乗り換えが進んだこと、そして「3G回線の終了」が大きな転換点となったためです。
また、LINEやYouTubeといった身近なアプリの活用により、ICTが「生活の一部」として受け入れられるようになっています。特にLINEの利用率はシニア層でも高く、子や孫とのコミュニケーション手段として定着しています。
さらに、健康管理アプリや交通案内、行政の手続きアプリなど、生活をサポートするアプリへの関心も高まりつつあります。
今後は、5Gや地域DXの進展により、行政や民間サービスのデジタル化がさらに加速します。これに伴い、シニア世代のICTリテラシー向上がますます重要となるでしょう。
シニア向け動画を活用するメリット
シニア層に向けたマーケティングや情報発信の中でも特に注目を集めているのが「動画」の活用です。ここでは、シニア向け動画を活用するメリットについて解説していきます。
情報伝達力の高さによる理解促進
シニア世代にとって、小さな文字がびっしり並んだパンフレットや複雑な図解は、読むのが億劫になりがちです。その点、動画であれば「見てわかる」「聞いて理解できる」ため、認知負担を大きく下げることができます。
ナレーションや実演を交えた説明、ゆっくりした語り口調や大きなテロップなど、動画だからこそできる配慮が可能です。
特に、行政手続きや医療系の案内、デジタル機器の操作方法など、文章だけでは伝えにくいテーマにおいて、動画は非常に有効なツールとなります。
共感・信頼感を高める人柄の可視化
文字だけの情報では、提供者の顔が見えにくく、距離を感じてしまうことがあります。シニア世代は特に「どんな人が発信しているのか」「この人は信頼できそうか」といった感覚を大切にする傾向があります。
動画であれば、話し手の表情や声のトーン、振る舞いまでもが視聴者に届きます。社員や講師、担当者の人柄がそのまま伝わることで、ブランドやサービスへの信頼感を高めやすくなります。
自治体の職員が登場する動画などは、その良い例といえるでしょう。
社会参加・自己実現を後押しする
シニア層の中には、退職後に「社会とのつながりが減った」と感じる人も少なくありません。そうした方々にとって、動画は「参加」のきっかけになり得ます。
例えば、地域活動や健康講座、趣味の紹介などを動画で配信することで、自宅にいながら情報収集ができ、新たなコミュニティ参加の入口にもなります。
さらに、自分が出演する・動画を投稿するという立場になることで、承認欲求や自己肯定感を満たす効果も期待できます。これは、特に自治体や地域団体による取り組みで顕著に見られるメリットです。
家族とのコミュニケーション促進
多くのシニアがスマホを使う理由のひとつに「子どもや孫との連絡」があります。動画を通じた情報発信は、シニア本人だけでなくその家族にもリーチしやすく、「この動画、親に見せてあげたい」といった共有を促します。
例えば、認知症予防体操やデジタル操作のハウツー動画などは、家族の関心も高く、自然なコミュニケーションのきっかけになります。こうした間接視聴の層を取り込めるのは、動画ならではの強みです。
シニア世代が対象の動画内容とは?
少しずつスマートフォンの普及率が高まり、シニア世代は家族などとのコミュニケーションや動画コンテンツなどを楽しむ事を主な用途として利用しています。
ではシニア世代が視聴する動画とはどういった内容なのでしょうか?実例をもとに紹介していきます。
デジタル機器解説「Husime TV(ふしめ てぃーびー)」

クラウドデータなどを展開しているAOSデータ株式会社がシニア世代のデジタル活用を支援する動画チャンネル「Husime TV(ふしめ てぃーびー)」を2021年に配信を開始させました。
シニア世代が主に使うとされるコミュニケーションツールの操作方法や認知症対策、食事管理のためのアプリの操作方法の解説動画を配信しています。
食生活「荒川区公式チャンネル」

こちらは荒川区が公式に地域情勢やイベント、学校行事などを配信しているアカウントになります。その中にシニア世代が摂取すべき食生活を管理栄養士が詳しく教える動画があげられています。
栄養素の観点から詳しく分析したバランス管理からシニア世代が幾度と買い物に行けない事を配慮した日持ちのいい食品の買い方まで幅広く紹介した内容になっています。
体操「三鷹市公式動画チャンネル」

続いては三鷹市が公式に配信しているアカウントで小さな子供向けの内容から街のパン屋さん紹介まで幅広く紹介しています。
その中にシニア世代に向けた体操を動画にしたものがあります。座りながらでもできる体操を音楽と共に紹介しているため、リハビリや認知症の患者などにも応用できる内容になっています。
シニア向け動画を作成するにあたって気を付けること
さてここまでシニア世代のICT事情や動画などを紹介してきましたが、実際にシニア向け動画を作成するにはどういったことに注意しなくてはいけないのでしょうか?作成方法と共に紹介します。
シニア世代の動画視聴数を把握
スマートフォンやパソコンなどを所有しているシニア世代が全員動画を視聴しているわけではありません。若い世代の場合100%に近い割合でスマートフォンで動画視聴をしていますが、シニア世代は電話のみの限られた利用ケースも多く、どれほどの人数が動画視聴をしているのか判明していません。
収益を確実に確保するためには動画のみを配信するのではなく、他のサービスと繋げた戦略が必要になります。
さらにシニア世代が自発的に動画を視聴することは数少なく、家族などに勧められたことで視聴する事が多くあります。そのため家族などに関心を持ってもらえるようなキャッチコピーが必要になります。
シニア世代が動画に興味を持つきっかけを調査
シニア世代が興味を持つ内容は地域や環境によって大きく異なります。視聴者となるシニア世代がどういった商品やサービスに関心があるのか前もった調査を行い、その地域や環境を考慮した動画内容にするようにしましょう。
あまりにも広告要素が強い動画だと不快感を感じ視聴をしてもらえなくなるため、自然な演出やストーリ性を高めるなどの工夫を凝らすとよいでしょう。シニア世代がどういった動画内容に関心を抱くのかなど、事前調査をしっかりと行いましょう。
シニア世代に配慮した動画編集
シニア世代に向けた動画作成において重要なのは編集になります。シニア世代には耳が遠い、ゆっくりとした動画や大きな文字でしか見えない等の問題を抱えていることが多くあります。
動画市場で再生回数を伸ばしている動画とは違い、シニア向けの配慮を含める必要があります。動画の中で大きな字幕や何度も繰り返し視聴できるように目次の設定などの工夫は視聴者に喜ばれるため導入しましょう。
他社比較
シニア向け動画の作成における注意事項をふまえた後は、実際に作成と行動に移しましょう。
作成において競合相手となる存在の確認はアレンジや戦略の参考になります。そこでシニア向け動画を配信している事例を紹介していきます。
ココカラ大学

ココカラ大学は株式会社やずやが運営し、「ココロ」も「カラダ」も健やかに毎日の生活を楽しくをコンセプトに趣味や料理・健康コンテンツを動画講座として配信しています。
動画講座の中には専門店を営む者や専門資格を有する講師が様々な知識を伝授してくれます。
東大阪市

東大阪市がyoutubeで地域のニュースや手話、料理講座を配信しているサイトになります。
地域に居住しているシニア世代を中心に動画配信しており、身近な題材が利用されていることで動画に親近感がわくような工夫が施されています。
まとめ
シニア向け動画について今回はひも解いてきましたがいかがでしょうか?
少子高齢化や5Gの普及があいまってシニア向け動画は今後需要が高まることでしょう。しかし現状シニア向け動画で成功しているといえる物は数多くありません。
未だシニア世代がインターネットではなくテレビを視聴していることが主な要因とされます。テレビ視聴者から顧客を収集できるかがシニア向け動画サービスの発展の鍵になります。