企業の採用が難しくなっている背景
近年、企業が人材を確保する難易度は年々高まっていますが、その背景には複数の要因が絡み合っています。採用活動に悩む企業は、まず「なぜ今これほど採用が難しくなっているのか」という全体像を正しく理解することが重要です。
日本全体の人口構造の変化
少子化によって労働市場に新しく参入する若年層の数が減少し、同時に高齢化が進むことで労働力人口全体が縮小しています。
厚生労働省の統計でも、15~64歳の生産年齢人口はすでに減少局面に入り、今後も減少が続くと予測されています。
この人口動態の変化はどの企業にも共通する課題であり、特に中小企業や地方企業は、都市部の大手企業に比べて人材を集めにくい状況に直面しています。
求職者の仕事観の変化
かつては給与や安定性を重視する傾向が強かったものの、現在は「自己成長の機会」や「柔軟な働き方」「ワークライフバランス」といった要素を優先する人が増えています。
特にZ世代やミレニアル世代は、企業の理念や社会的な取り組みへの共感度も就職・転職の大きな判断基準にしています。
従来型の待遇や年功序列的なキャリア設計を前面に出すだけでは、優秀な若手人材を惹きつけることは難しくなっています。
働き方の多様化
コロナ禍をきっかけにテレワークやフリーランス、副業などが一般化し、「必ずしも正社員として企業に所属する必要はない」という価値観が広がりました。
優秀な人材ほど自分に合った働き方を選択しやすくなっているため、企業側が一方的に提示する条件では選ばれにくい状況になっています。
求職者は、仕事内容や待遇だけでなく「柔軟な勤務体制」「リモート環境の整備」「学び直しのサポート」なども重視するようになっているのです。
企業間の人材獲得競争の激化
人口が減少する中で成長分野に人材需要が集中しており、ITエンジニアやデジタルマーケター、介護・医療職などは常に人手不足が続いています。
そのため、他業種からも幅広く人材を取り合う構図となり、特定のスキルを持つ人材ほど競争率が高まっています。
結果として、採用に十分な時間やコストを割けない企業ほど不利な立場に追い込まれやすくなっています。
企業の採用がうまくいかない6つの理由
少子高齢化によって働き盛りの世代の数が減ったことも企業の採用がうまくいかない理由の一つではありますが、それはどの企業も一緒です。
しかし、採用がうまくいっていない企業ばかりではなく、応募が殺到し、将来有望な人材をしっかりと獲得できている企業もあります。
それらの企業と採用がイマイチうまくいっていない企業にはどこに違いがあるのでしょうか?
人材をなかなか獲得できずに頭を悩ませている企業の採用がうまくいかない6つの理由について解説していきます。
採用の目的がハッキリとしていない
採用がうまくいっていない企業は、採用の目的がハッキリとしておらず惰性的に採用活動をおこなっているケースが少なくありません。
採用を検討しているのであれば、採用した人を配属する部署や担当してもらう業務などについてもハッキリとさせておくべきです。
しかし、採用がうまくいっていない企業はそこがハッキリとしていないため、採用活動そのものがグダグダになってしまい、その結果「採用がうまくいかない…」となってしまっているわけです。
求める人物像がハッキリとしていない
採用の目的をハッキリさせられていない場合、どういった人材を獲得するべきかについてもハッキリさせることができません。
例えば、ホームページの作成や更新などをWebを担当してもらいたいのであればWebに強い人を採用する必要がありますし、営業を担当してもらいたいのであれば営業経験のある人を採用するべきです。
しかし、採用の目的がハッキリとしておらず、どういった業務を任せる予定なのかが決まっていないと採用するべき人物像が見えてきません。
その結果、どういった人を集めればいいのか、どういった人材を獲得すればいいのかがわからず、採用がうまくいかなくなってしまうわけです。
一つのチャネルに固執し過ぎている
スマートフォンが登場し、普及して以降、求職者の情報収集のやり方も大きく様変わりしました。
これまでは専門誌や就職・転職フェアに参加するなどアナログな方法が主流でしたが、最近では、情報収集に関してはオンライン上で完結できるようになってきています。
そのため、古いチャネルや一つのチャネルに固執するべきではなくさまざまな方法で情報を発信するべきだと言えるわけですが、うまくいっていない企業は古いチャネルや一つのチャネルに固執してしまっている傾向にあります。
採用後のフォロー体制が整っていない
入社してきた人材を育てるフォロー体制が整っていないと、せっかく採用した人材が早期に退職してしまいかねません。
いくら人を集めることができても、入ってきた人材がすぐに辞めてしまうようでは意味がありませんし、人材が育たないとコストだけがかさんでしまうため、むしろたちが悪いと言えるでしょう。
会社のことをうまくアピールできていない
応募してくれる求職者や問い合わせをおこなってくれる求職者が少ない会社の場合、会社のことをうまくアピールできていない可能性が高いと考えられます。
いくら魅力的な会社でも、そのことを求職者にアピールできていない状態だと人は集まらないため、アピールの仕方を見直さなくてはいけません。
採用の条件が魅力的ではない
仕事の内容ややりがいを重視する求職者は少なくありませんが、他の会社より見劣りしてしまう条件では人を集めることはできません。
そのため、採用の条件が魅力的でない場合も応募や問い合わせが少なくなってしまう傾向にあります。
採用がうまくいかないときに試すべき7つの対処法
先ほど紹介した採用がうまくいかない6つの理由には、それぞれ対処法があります。
これらを実践したからと言って明日から将来有望な人材の応募が殺到するというわけではありませんが、少なくとも今の状況を好転させることはできるはずです。
「採用がうまくいかない…」と頭を悩ませている企業が試してみるべき7つの対処法について解説していきます。
採用の目的をハッキリさせておく
採用の目的がハッキリしておらず、「とりあえず人が必要だから…」という理由で採用しようと考えているのであれば、まず採用の目的をハッキリさせるところから始めましょう。
採用の目的がハッキリしていない状態で採用活動がうまくいくことはありません。
「なぜ採用する必要があるのか」や「採用することでどういった問題を解消したいのか」など、採用の理由や目的をハッキリさせましょう。
採用したい人物像をハッキリさせておく
採用の目的は決まっているものの、どういった人材を採用するべきかがハッキリとしていないのであれば、採用したい人物像をハッキリさせましょう。
その人に担当してほしい業務やその人に解消してほしい問題が明確になっていれば、採用するべき人物像もおのずと明確になるはずです。
求める人物像が明確になれば、「こういった人材を求めています」といった形で募集要項にも記載できるようになり、採用活動がよりおこないやすくなります。
さまざまなチャネルを試してみる
もし特定のやり方や特定のチャネルでの採用に固執してしまっているのであれば、古い考え方や凝り固まった考え方を捨て、新しいチャネルでの採用にも取り組んでみてください。
例えば、Webをほとんど活用していないのであればWebでも情報を発信してみるべきですし、SNSを一切活用していないのであればSNSも積極的に活用してみましょう。
採用活動に動画を活用してみる
すでに取り入れている企業も多く、これからの企業の採用活動において主流となる可能性が高いのが「動画」です。
動画は映像を通して企業の魅力を伝えることができるので、求職者にイメージを持ってもらいやすく、応募や問い合わせを誘発しやすいという特徴があります。
もし採用活動に動画を活用したことがないのであれば、ぜひ導入を検討してみてください。
入社後のフォロー体制を整えておく
いくら人を採用できたとしても、早期に退職されてしまうようでは意味がありません。
入社後の研修など新入社員を育てる体制が整っていないと人材の流出を止めることはできませんので、入社後のフォロー体制も整えておく必要があります。
研修のシステムを整えておくのはもちろん、研修が完了した後に配属する部署やおこなってほしい業務、解消してもらいたい問題などについても明確にしておくようにしましょう。
アピール方法を見直す
もし採用活動に取り組んでいるものの人が集まらないというのであれば、アピール方法を見直すべきです。
採用活動をおこなっていることを露出できているのにも関わらず人が集まらない場合、企業や仕事の魅力が求職者にうまく伝わっていない可能性が高いと考えられます。
その場合、今のPR方法で求職者にアピールし続けても応募や問い合わせが増えるとは考えにくく、そのままだといつまで経っても人材を獲得することはできません。
企業の強みや仕事の魅力など、アピールするべきポイントを改めて見つめ直し、今とは異なる角度からPRをおこなう必要があります。
募集要項を見直す
いくら露出を増やし、求職者にアピールしたとしても、採用の条件が魅力的でなければ人は集まりません。
競合他社の募集要項と自社の募集要項を比較し、条件が見劣りしてしまっていないか確認しましょう。
給与や福利厚生など、他社と比較して劣っていると感じられる箇所がある場合は見直しを検討してみてください。
まとめ
「採用がうまくいかない…」と悩んでいる経営者や担当者向けに、採用がうまくいかない理由と対処法について紹介してきました。
高齢化の影響で採用の難易度が高まってきているのは確かです。
しかし、採用がうまくいっていない企業は他にも何かしらの理由がある傾向が強いので、まずは自社の採用活動を見直してみて、うまくいかない理由を探ってみるべきです。
今回紹介した7つの対処法はいずれも有効なものばかりですので、自社の採用活動がうまくいっていない理由にあう方法で対処してみてください。