近年、広告などで動画を使用している企業が増えてきています。動画はサービスを告知する際に有効な手段の一つですが、利用する際に法律関係のことを知っておかないとトラブルに巻き込まれてしまうこともあります。
そこで、この記事では安全に動画コンテンツを使用してもらうため、「著作権」について紹介していきます。動画コンテンツ使用時に注意するポイントも詳しく説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事は、こんな方におすすめです
- ✅ 社内で安心して活用できる動画を作りたいと考えている
- ✅ 社員や顧客が登場する動画の著作権・肖像権に不安がある
- ✅ フリー素材やBGMを使って効率的に動画を制作したい
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著作権とは
著作権とは、知的財産権の一つです。著作物を他人に侵害されないための権利です。
著作権の概要
著作権は自然権と違って、著作者が意識しなくても自然と権利が発生します。著作物が完成した時点で、その権利が発生することに気を付けましょう。
特許や商標とは違って登録の必要がないのが著作権の特徴とも言えます。
動画コンテンツを作成した際に著作権で注意してほしいのが、動画コンテンツの制作者は制作会社になるということです。
この点を誤解されることが多いので、動画コンテンツを制作する際には必ず知っておきましょう。
著作権の種類
著作権にはいくつか種類があり、以下のようなものをまとめて「著作権」と呼んでいます。
・上映権:動画コンテンツを公に上映する権利
・複製権:動画コンテンツをコピーする権利
・公衆送信権:公衆(テレビやラジオ)によって直接受信されることを目的として、著作物を送信することができる権利
・上演権:著作物を聞かせたり、見せたりする権利
・翻案権:原作をもとに二次的な著作物を創作する権利
このほかにもいくつかあり、様々な権利が著作物に保証されています。
著作権を侵害した場合のリスク
著作権を侵害してしまった場合、どのようになってしまうのでしょうか。
もしそのようなことになった場合、以下のような民事上の訴求に応じなければなりません。
・不当利得の返還
・損害賠償
・侵害行為の差し止め
・名誉回復などの措置
また、犯罪である著作権侵害で刑事告訴された場合、「10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金」という罰則が課せられます。
個人ではなく、法人が著作権を侵害した場合3億円以下の罰金が課せられます。
企業において、罰則を課せられるよりも社会的信用を失う方が、今後の活動に関わってくるので注意しましょう。
動画コンテンツ使用時に注意するポイント
上記で紹介したように、動画コンテンツを使用する際に著作権を侵害すると罰則される可能性があります。そのため、動画コンテンツ作成・使用時には注意する必要があります。
ここでは、著作権を侵害しないために注意するポイントを4つに分けて紹介していきます。
許可なく音楽コンテンツを使用しない
動画制作する上で、音楽は欠かせないものとなっています。
動画を制作する際にBGMを挿入すると思いますが、BGMのような音楽素材も音楽著作権(作詞・作曲・編曲など)や著作隣接権(演奏・録音など)に保護されているため、無断利用は違法です。
楽曲管理について記載しているJASRACでは、営利団体の企業の活動では商用利用になるため、楽曲使用時に許可申請が必要であると述べています。
音楽は誰でも気軽に使用できることから、多くの人が気づかずに著作権侵害をしている可能性があります。
海外コンテンツも著作権の対象
国内で流す動画を制作する際、海外コンテンツを使用すればいいのではないか、と思う方も多いのではないでしょうか。海外と日本では法律が違うから著作権も別なのではないかと。
しかし、海外で制作された動画コンテンツや素材にも、日本と同じく著作権で保護されています。そのため、海外のコンテンツでも安易に使用することは避けるようにしましょう。
事前に使用していいのか確認や許可申請をしましょう。
また、国を挟んでも著作権が保護されている理由としてはベルヌ条約や万国著作権条約が関係しています。
・ベルヌ条約:1868年に定められた、世界の著作権法。著作権において最も基本的であり重要な条約。
・万国著作権条約:1952年、国際法の関係でベルヌ条約を批准できなかった国のために、ベルヌ条約を補完したもの。ユネスコが提唱して決まったので、ユネスコ条約とも呼ばれている。
著作物が背景に映らないようにする
動画は静止画と違ってたくさんのシーンが使用されます。その際、背景に様々なものが写りこんでしまう時があります。
映画のポスターやアニメのキャラクター、商品のロゴなどが著作物として取り上げられます。わざとでなくても、写ってしまっている場合は著作権侵害として訴えられることがあるので気を付けましょう。
著作物が小さく写りこんでいるだけならば、著作物侵害として取り上げられる可能性は低いです。著作物侵害の境界線としては、「著作物の利益を害さない」ことです。
もし、動画を流すことでその著作物のイメージがダウンするようならば侵害にあたります。
著作物侵害は必ずしも明確な判断があるわけではなくケースバイケースなので、できるだけ著作物が動画コンテンツに写りこまないようにしましょう。
フリー素材を使用する
著作物を使用したい場合、著作者に許可を申請すれば使用できますが、想像以上の支払いを請求されることもあります。そのため、支払額を払うことが難しい場合は無料で使えるフリー素材を使用してみましょう。
当たり前ですが、フリー素材は使用しても著作権侵害にならないので、どれだけ利用しても問題ありません。
近年は比較的、フリー素材のBGMや画像を提供している業者や企業が多いです。それらのフリー素材のクオリティは決して低くなく、動画制作において問題なく利用することができます。
著作権のことがよく理解できない方や素材にコストを費やしたくない方は、ぜひフリー素材を使用してみましょう。
著作権だけではなく肖像権にも注意
動画コンテンツを制作・活用する際、多くの制作者が意識するのは「著作権」です。しかし、実はそれと同じくらい重要なのが「肖像権」への配慮です。
知らずに肖像権を侵害してしまった場合、個人や企業とのトラブルに発展する可能性もあるため、著作権と同様に事前の知識と対策が必要です。
肖像権とは
肖像権とは、「自分の顔や姿を無断で撮影・公開されない権利」のことです。
これは日本の法律で明確に条文化されているわけではありませんが、裁判所の判例などにより認められてきた権利であり、一般に「プライバシー権」として扱われています。
さらに、タレントや有名人などが自らの顔や名前を広告などで使用することに対して得られる利益の保護を目的とした「パブリシティ権」も、広義では肖像権に含まれます。
つまり、たとえ道行く人が偶然に映ったとしても、本人の許可がなければ映像の公開には慎重になるべきです。
対策としては、事前に同意を得ることが最も重要です。街頭インタビューやお客様の声を使った動画などでは、撮影時に「同意書」や「口頭での撮影許可」を確実に取るようにしましょう。
また、従業員が映る場合には、入社時に肖像の使用について包括的な同意を取っておくとスムーズです。
著作権と肖像権の違い
動画コンテンツ制作において、しばしば混同されやすいのが「著作権」と「肖像権」です。どちらも無断使用に関係する権利ですが、守られている対象や法律上の性質は全く異なります。
動画制作の現場では、「この素材はフリーだから大丈夫」と思って使った写真に人物が写っており、結果として肖像権を侵害してしまったという事例も少なくありません。著作権と肖像権は別の視点で確認する必要があるということを念頭に置いてください。
また、社内動画などで従業員が登場する場合にも、「会社の業務だからOK」と思いがちですが、原則として本人の同意がなければ使用できません。
一度インターネット上に公開した動画は拡散性が高く、退職後に「動画を削除してほしい」といった申し出を受けるケースもあります。
そのようなトラブルを避けるためには、以下のような対応をおすすめします。
・従業員や出演者に対して、事前に肖像利用の承諾を明示した同意書を交わす
・撮影時に、撮影範囲を明確に伝えたうえで、映り込みリスクを管理
・不特定多数が映る場合は、顔にモザイク加工を施すか、そもそも映さない構図にする
・撮影前に「使用範囲」「公開先」「期間」などを明記した上で許可を得る
動画制作を外注した際、著作権は制作会社に
動画制作を外注する場合、著作権が制作者なのか依頼者なのか判断が難しいと思います。
基本的に、制作会社は動画コンテンツ制作者です。そのため著作権は動画制作者(外注された人)にあります。依頼者は、著作権ではなく「著作利用権」があるだけなので注意しましょう。
ただし、契約で「著作権譲渡」を取り決めることも可能なので、利用範囲や権利帰属について必ず契約書で確認しましょう。
まとめ
動画コンテンツにおける著作権について理解することはできたでしょうか。著作権は内容が複雑な上、動画制作の著作権ともなるとより複雑になってきます。
この記事で記載したポイントを押さえないと、大変なトラブルに巻き込まれる恐れがあります。
そのため、動画制作する場合は、まずは著作権の知識を身に付けることをおすすめします。弊社提供クラウド動画編集ツール「メディア博士」では、著作権フリーのBGMやフリー画像・動画素材を多数用意しております。
著作権を気にせず、より効率的に動画を作りたい場合や動画の企画制作サポートを必要とする場合などは弊社に一度ご相談ください。