インターネットやスマートフォン・タブレットなどのモバイル端末の登場によってビジネスにおけるマーケティングのあり方は日々変化していますが、近年注目を集めているのが「UGC」です。
実際、「UGC」という単語を耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
今回は、そんなUGCについて徹底的に深堀りし、紹介していきます。
UGC(User Generated Contents)とは
UGCはUser Generated Contentsの略称で、「ユーザーが生成したコンテンツ」という意味を持つ言葉です。
これまで、コンテンツは企業が制作して発信するのが一般的でした。
企業が自社の製品やサービスを紹介するWEBページや動画を制作して発信したり、自社の製品に関連するコンテンツを制作して発信したりしていたわけです。
しかし、近年はインターネットやSNSが急速に発展し、誰でも気軽に情報を発信できるようになったことでユーザー自身がコンテンツを気軽に生成して投稿し、発信するようになりました。
それによって、UGCという考え方が生まれ、広まるようになったのです。
ユーザーが生成したコンテンツであればそのすべてがUGCにあたりますが、代表的なものとしては、
・InstagramやTwitterなどSNSへの投稿
・個人のブログに投稿されたブログ記事
・YouTubeにアップされた動画
などがあげられます。
また、
・Wikipediaへの書き込み
・ブログやSNS、動画配信プラットフォームにアップされたコンテンツに対するユーザーのコメント
・ECサイトで販売されている製品に対するレビュー
などもユーザーの声によって生成されているため、UGCの一つになります。
IGCやCGMとの違い
UGCと混同されてしまいがちなものにIGCとCGMがありますが、これらはUGCとはまったく別の意味・性質を持つものなので混同を避けるようにしなくてはいけません。
IGCは、Influencer Generated Contentの略称で、「インフルエンサーが生成するコンテンツ」という意味を持つ言葉です。
企業ではなく個人が生成するコンテンツという意味ではUGCと同じですが、自発的にコンテンツを生成しているかどうかがUGCとの大きな違いになります。
インフルエンサーが投稿するコンテンツは、自発的に生成して発信するコンテンツと企業から依頼されて発信するコンテンツに分けられますが、企業から依頼されて生成・発信するのがIGCコンテンツです。
自分の意思で生成するのではなく、金銭を受け取って企業のプロモーションをおこなうためのコンテンツを生成するため、UGCとは性質や目的が異なるものとして認識されているわけです。
一方、CGMは、Consumer Generated Mediaの略称で、「カスタマーが生成するメディア」という意味を持つ言葉です。
Webメディアの中には、企業や個人がコンテンツを生成して発信しているメディア以外に、複数のユーザーの投稿によってコンテンツ化されるタイプのメディアもあります。
代表的なものとしては、
・Yahoo!知恵袋やOKWAVEなどのQ&Aサービス
・食べログやぐるなびなどの飲食店情報サイト
・クックパッドや楽天レシピなどのレシピ投稿サイト
などがあげられます。
これらは、土台となるプラットフォームやシステムこそ企業が用意したものを使用しますが、メインのコンテンツは複数のユーザーによって生成されたものです。
一つ一つはコンテンツと呼べるほどのものではないことがほとんどですが、複数のユーザーが投稿することによってそれらがかけ合わさり、立派なコンテンツとして形を成すようになります。
UGCがマーケティングで重要視される理由
企業ではなくユーザー自身が生成するコンテンツであるUGCですが、なぜ今UGCがマーケティングにおいて重要だと言われているのでしょうか?
UGCが企業のマーケティングにおいて重要だと言われる主な理由としては、
・ユーザーが求めているコンテンツに近いから
・ユーザーの情報収集の方法が変化してきているから
・広告に対するユーザーの嫌悪感が高まってきているから
・消費者の購買意欲を喚起してくれるから
の、4点があげられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
ユーザーが求めているコンテンツに近いから
UGCは、今現在ユーザーが求めているコンテンツに最も近いコンテンツだとされています。
インターネット環境が発展した現代は、企業が何かしらのコンテンツを生成して発信するのが当たり前で、どのプラットフォームを見ても企業が生成したコンテンツで溢れかえっています。
企業が生成したコンテンツであってもユーザーのためになる良質なコンテンツであれば問題はありません。
ただ、企業が生成するコンテンツの中には、低品質なコンテンツや、自社の製品やサービスを売ることを目的としているコンテンツも多く、ユーザーがそういったコンテンツを毛嫌いするようになってきています。
そこで求められるようになってきたのが、UGCです。
UGCは、コンテンツを見る側の消費者と同じ立場にあるユーザーが自分の目線で企業に忖度することなく正直な意見を述べているので、「参考になる」「信じられる」と考えるユーザーが多くなっているわけです。
また、ファッションアイテムの場合、綺麗に着飾ったモデルではなく、自分により近い一般のユーザーが着用している画像や使用している画像を求めるユーザーが増えてきているといった側面もあります。
ユーザーの情報収集の方法が変化してきているから
これまでインターネットでの情報収集は検索ブラウザでおこなうのが一般的でした。
もちろん、検索ブラウザを活用した情報収集は今でも広く活用されてはいますが、若い世代ほどSNSで情報を収集するようになってきています。
検索ブラウザは、コンテンツマーケティングが大流行した影響もあって探している情報にたどり着くのが難しくなってきている傾向にあり、「使いづらい」「情報を探しづらい」と感じるユーザーが増えてきています。
そのため、SNSを活用するように変化してきているわけです。
SNSでも企業が生成したコンテンツが投稿されていることはありますが、ユーザー同士が交流する場というサービスの性質上UGCコンテンツの方が圧倒的に多く、求められているものも、企業が生成するコンテンツではなくUGCです。
この流れは今後も加速すると予想されるため、SNSと相性の良いUGCコンテンツが重要だと考えられているわけです。
広告に対するユーザーの嫌悪感が高まってきているから
UGCの重要性が高まってきている背景としては、広告に対するユーザーの嫌悪感が高まってきている点もあげられます。
インターネットが発展する以前は、広告にふれる機会はそこまで多くありませんでした。
街頭の広告や雑誌に掲載されている広告、テレビのCMなど今も変わらず活用されている広告もありますが、常に何かしらの広告を目にしているという人は極稀で、広告をそこまでに気にしていない・煩わしく思っていないと感じている人の方が多かったはずです。
一方、インターネットが発展し、PCやスマホが広く普及するようになってからは、それらのデバイスを使用している間中、常に広告に触れていると言っても過言ではありません。
検索ブラウザで情報を検索しても広告が表示されますし、アプリの使用中に広告が表示されることも少なくありません。
中には、スクロールすると追従してくる広告や、ページを遷移すると画面全体に表示され、バツ印をタップしないと消えないような広告もあるため、ユーザーが広告疲れを起こし、嫌悪感を抱くようになってしまっています。
そういった傾向もあり、広告色が強くなく、より信頼できるコンテンツであるUGCをユーザーが求めるようになったわけです。
消費者の購買意欲を喚起してくれるから
PCやスマホなどのデバイスを使用するたびに表示される広告に疲れている現代のユーザーは、広告に嫌悪感を抱きやすくなっているということもあり、広告に購買意欲を喚起されにくくなりつつあります。
一方、広告よりも信頼性が高いUGCは、今でも消費者の購買意欲をしっかりと喚起してくれます。
商品のレビューは代表的なUGCですが、画像や実際に使った感想を交えながら解説されているレビュー記事やSNSでのレビュー投稿は実際に自分が使っている様子をイメージしやすくなるため、強烈にユーザーの購買意欲を刺激します。
映像で解説したり紹介できたりする動画のUGCであればなおさらです。
UGCは、ユーザーの購買意欲を喚起しにくくなってしまった広告の役割を補完する存在として、企業におけるマーケティング活動で重要視されるようになってきています。
UGCを活用するときに気を付けるべきこと・注意点
活用する企業も増えてきているUGCですが、実際にマーケティングに活用する場合、いくつか気をつけなくてはいけないポイントがあります。
主な注意点としてあげられるのは、以下の4点です。
・ステルスマーケティングはおこなわない
・マーケティングに使用する場合は必ずユーザーから許可を得る
・薬機法などのルールに気をつける
・ネガティブな意見の取り扱いに注意する
それぞれの注意点について詳しく解説していきます。
ステルスマーケティングはおこなわない
マーケティングにUGCを活用する際、まず気をつけなくてはならないのがステルスマーケティングについてです。
UGCはあくまでもユーザーが自発的に発信するコンテンツを指す言葉です。
インフルエンサーに依頼して発信してもらうコンテンツはIGCにあたるため、プロモーションであることを公表せずにコンテンツを公開してしまうとステルスマーケティングに該当してしまいます。
近年、ステルスマーケティングに対する風当たりが強くなってきているため、ステルスマーケティングはおこなうべきではありません。
ユーザーのリテラシーも高くなってきているので、「バレないだろう」という安易な考えでおこなってしまうと企業のブランド自体に傷がついてしまいかねません。
IGCも立派なマーケティング方法の一つですが、UGCとは異なるアプローチ方法であるため、それぞれの特性やメリット・デメリットを理解した上で活用するようにしてください。
マーケティングに使用する場合は必ずユーザーから許可を得る
企業がUGCをマーケティングに活用する場合、UGCを投稿したユーザーに許可を得た上で活用するようにしなくてはいけません。
いくら自社の製品やサービスについて語られたコンテンツだとしても、コンテンツの著作権はユーザーに帰属するので、許可を得ずに勝手に使ってしまうと著作権の侵害にあたる可能性があります。
この場合も企業のブランド力に傷がついてしまいかねませんので、必ず許可を得た上で使用するようにしてください。
薬機法などのルールに気をつける
化粧品や健康食品などを販売している企業がUGCをマーケティングに活用する場合は薬機法にも気をつけなくてはいけません。
UGCをLPや広告に起用する場合、こちらで作成した箇所だけでなくUGCも薬機法の対象とみなされてしまうため、UGCに薬機法に抵触する表現が用いられていた場合、そのUGCを利用した企業側が処罰の対象となってしまう可能性があるので注意しましょう。
ネガティブな意見の取り扱いに注意する
ユーザーが投稿するコンテンツや意見の中には、ポジティブな意見もあればネガティブな意見もあります。
ネガティブな意見は商品の購入やサービスの利用を検討しているユーザーにもネガティブな印象をあたえてしまう可能性があるため意図的に避ける企業も少なくありませんが、多少はネガティブな意見も取り入れるべきです。
まったくネガティブな意見が発信されていないと逆に疑いをもたれてしまいかねませんし、UGCの信ぴょう性が低くなってしまいかねませんので、ネガティブな意見にも触れつつ、うまくカバーしながら活用するようにしましょう。
UGC活用で成功するためのポイント・コツ
マーケティングにUGCを活用する場合、マーケティングを成功させるためのポイントやコツについても把握しておくべきです。
マーケティングにUGCを活用して成果をあげるためのコツとしては、
・UGCの活用法を押さえておく
・ユーザーがUGCを生成したくなるような施策を考える
・データを分析し、改善する
の、3点があげられます。
それぞれ詳しく解説していきます。
UGCの活用法を押さえておく
マーケティングにUGCを活用したいと考えているのであれば、UGCの具体的な活用方法を押さえておくことが大切です。
ユーザーが優れたUGCを作成して発信してくれたとしても、企業側がうまく活用できないのであれば意味がありません。
UGCの定番の活用法としては、自社のSNSやWebサイトに掲載する方法や、広告やLPの素材として活用する方法などがあげられます。
「UGCを集めるための施策を展開したものの、集まったUGCをどう活用するか考えていなかった」という事例は少なくありませんので、UGCをどうやって活用していくのか前もって考えておくようにしましょう。
ユーザーがUGCを生成したくなるような施策を考える
マーケティングにUGCを活用したいと考えているのであれば、ユーザーが自発的にコンテンツを生成して発信したくなるような環境を整えておかなくてはいけません。
UGCを活用したUGCマーケティングは一般的なマーケティング方法とは異なり、コンテンツをこちらで用意することができません。
UGCを活用してコンテンツを作ることはできますが、あくまでもメインとなるのはユーザーが自発的に発信したコンテンツであるUGCです。
そのため、まずはユーザーにUGCを生成して発信してもらう必要があるわけです。
また、マーケティングに活用するとなるとそれなりに数も必要になるので、施策を考え、ユーザーにコンテンツを投稿してもらえるようにしましょう。
代表的な施策としては、SNSでのUGCの生成に用いられるハッシュタグの活用があげられます。
例えば、製品名のハッシュタグやキャンペーンのハッシュタグを企業側で用意して、「このハッシュタグをつけて投稿してね」と投稿を促したり、「このハッシュタグをつけて投稿すると公式アカウントで紹介されます」などと訴求して投稿を促していきます。
特典があると参加してくれるユーザーが増えるので、「公式アカウントで紹介します」といった施策は積極的におこないたいところです。
また、SNSのコメント欄などを活用して普段からユーザーと積極的に交流しておくようにすると、ユーザーが親近感を感じ、UGCを積極的に投稿してくれるようになります。
データを分析し、改善する
UGCを活用したマーケティングは今の時代にマッチする魅力的で効果的なマーケティング方法ですが、初めておこなった施策が大当たりするほど簡単というわけではありません。
思うように成果をあげられなかったり、反応は得られるものの、その反応があまりよくないというケースも多々あります。
コンテンツのメインとなるUGCが思うように集まらないこともあるでしょう。
そこで重要になるのが、データの分析と改善です。
UGCマーケティングをおこなう際は、ただ施策を展開するのではなく、データをとりながらおこなうようにしましょう。
データをとることで初めて改善点が見えてくるようになり、より効率的にマーケティングできるようになりますし、より大きな成果をあげられるようにもなります。
データをとらずに進めてしまうと、いつまでも効率が悪く成果のあがらないやり方で進めてしまうことになりかねないので、必ずデータを取り、定期的に分析して改善策を考えながら取り組むようにしてください。
UGCマーケティングを行っている成功事例
UGCをマーケティングに活用して成果をあげたいと考えているのであれば、実際にUGCマーケティングをおこなって成果をあげている企業の成功事例をチェックしておくことも大切です。
成功事例から学べることは多く、「こう活用すればいいのか」「こういった方法もあるのか」など、重要なポイントや成功の秘訣が見えてくることも珍しくありません。
ここでは、特に参考になりそうな事例を3つピックアップして紹介していきます。
株式会社kadokawa
書籍や映画などエンタメ関連の事業を中心におこなっている「株式会社kadokawa」。
株式会社kadokawaは子ども向けの絵本も出版していますが、Instagramに開設している絵本専用のアカウント(
kadokawa_ehon)でUGCをうまく活用しています。
株式会社kadokawaでは、Instagramのホームに「絵本を楽しんでいるご様子のシェア、嬉しいです。ぜひタイトルや@kadokawa_ehonをタグ付けして投稿くださいね」と記載してユーザーへUGCの投稿を促し、投稿されたUGCをInstagramのアカウントに改めて投稿する形で活用。
公式サイトにアップされたUGCを見ることで、他の親御さんの「うちの子も投稿したい!掲載してほしい!」という気持ちを刺激し、より多くのユーザーにUGCを投稿してもらえるという良い循環が生まれています。
株式会社ニトリ
リーズナブルな家具や雑貨を製造・販売している国内最大規模のインテリアショップ、「ニトリ」。
ニトリもUGCを積極的に活用している企業の一つです。
ニトリはTwitterに自社のアカウント(
@NitoriOfficial)を開設しており、新商品や既存の人気商品の情報を積極的に投稿しています。
また、商品の情報を投稿するだけでなくUGCも積極的に活用しており、ユーザーが投稿したニトリの商品に関するツイートを積極的にリツイートして紹介しています。
Twitterをうまく活用している事例の一つです。
森永製菓株式会社
日本を代表するお菓子メーカーとして人気の「森永製菓株式会社」。
森永製菓株式会社は、自社のTwitterアカウント(
@MorinagaChoco)上で、自社の人気商品である「BAKE(ベイク)」というお菓子を購入しない理由を募集しました。
ただ募集しただけでは思うように投稿が集まらないと考え、「#ベイクを買わない理由100円買取」というハッシュタグを設置。
これは、ハッシュタグをつけてベイクを購入しない理由をつぶやいてくれたユーザーに100円分のAmazonギフト券をプレゼントするという施策で、この施策が大当たりし、1日で数万件のUGCが集まったと言います。
貴重なユーザーの声を集めつつUGCの生成を促している、非常にうまい事例の一つです。
UGCマーケティングで動画を活用する
UGCマーケティングに用いられるコンテンツには、ブログやTwitterへの投稿のようにテキストがメインになるタイプのコンテンツもあれば、Instagramのように画像がメインになるタイプのコンテンツもあります。
UGCマーケティングで成果をあげるには自社の製品やサービスと相性が良いと思われる方法でマーケティングをおこなうことが重要になりますが、近年注目されているのが動画がメインになるUGCコンテンツです。
動画がメインとなるUGCコンテンツの中でも特に代表的なものとしては、YouTubeに投稿される動画や、InstagramやTikTokに投稿されるショート動画などがあげられます。
動画には、
・映像で訴求できる
・映像やナレーション、テロップなどさまざまな表現方法で訴求できる
・短時間でより多くの情報を伝えることができる
など、さまざまなメリットがあり、それらのメリットはUGCコンテンツにも当てはまります。
また、今最も勢いのあるコンテンツでユーザーからの需要が高いという点もUGCに動画を活用するメリットの一つです。
UGCをマーケティングに活用するにはユーザーにコンテンツを生成してもらう必要があるためできないことも少なくありませんが、時代の流れや成果をあげている企業が多い点を考えると積極的に活用するべきだと言えるので、ユーザーが動画でUGCを生成したくなる施策を考え、生成されたUGCをマーケティングに積極的に活用するようにしましょう。
まとめ|UGCでマーケティングを成功させよう
年々企業のマーケティング活動での重要性が増してきているUGCについて詳しく紹介してきました。
企業が生成するコンテンツや広告が溢れている現代のマーケティングにおいて、UGCはとても重要な存在だと言えます。
今後、この流れはますます加速していくと考えられるため、今のうちからマーケティングにUGCを取り入れるようにしておかなくてはいけません。
UGCは、コンテンツの生成をユーザーにある程度促すことはできますが、こちらですべてをコントロールできるわけではなく、マーケティングにしっかりと活用できるようになるまでに時間がかかる可能性があるため、今のうちから仕組みを作っておくことが重要です。
今回紹介した内容を参考にしながら、UGCをうまく取り入れて活用し、マーケティングを成功させましょう。