精密機器の分野では、これまでに多種多様な製品や技術が生み出されてきました。さらに現在テクノロジーの発展によって、巨大な装置から極微細な構造まで、さまざまな新しい精密機器が登場しています。
しかしインターネットと情報通信技術が広がるにつれ、精密機器業界にも大きな変化の波が押し寄せており、各メーカーや企業のPR戦略もそれに合わせる必要が出てきました。
今回は、その戦略の1つとして、精密機器業界における動画活用法について検証してみましょう。
精密機器業界のPRポイント
一般の人々が精密機器と聞いてイメージするのは、例えばカメラやビデオカメラなどの光学機器、コピー機などの事務用機器、またはさまざまな医療用機器ではないでしょうか。
しかし実際には、精密機器とは非常に幅広い工業製品の総称で、高精度の技術を必要とする機械や器具類全般を指します。
近年精密機器業界では激しい変化が起きていて、カメラやコピー機のように誰もが使っていたなじみ深い製品の需要が縮小を続けています。
その原因として考えられるのが、インターネットの進化とスマートフォンの普及のような、デジタル仮想空間技術の広がりでしょう。
今まで精密機器業界では、現実に存在するモノに対する高い技術をウリにして、メーカーが自社の製品を個人や企業にPRしていました。
ところが現在は、個人の指向や企業のニーズが大きく変化しています。そこで業界としては経営戦略を立て直すと同時に、PRの方法を変える必要が出てきたのです。
これまでのように、テレビのCMで特定の商品をPRしても、ユーザーの関心はインターネットが中心になってしまったので、以前のような宣伝効果は得られません。
今後の精密機器業界のPRは、やはりWeb広告の比重が高くなり、その中でも動画活用が最大のポイントになるでしょう。
参考サイト:ニコ精密機器「企業紹介」
新潟県にあるディーゼルエンジン用の燃料噴射装置を手がける企業では、製品そのものを全面に出した動画ではなく、企業の取り組みを伝えるための動画を配信しています。
これも1つの方法ですが、他にも企業のPR動画にはさまざまなタイプがあります。ここからは、精密機器業界での動画活用について、さらに深くまでポイントを探ってみましょう。
具体的な動画活用のポイント
精密機器の分野では、やはりハイレベルな技術を伝える必要があります。ただし現在の動画は、以前に比べてアプローチのパターンが格段に増えています。ここではその中から、特徴的な動画活用事例をいくつか紹介します。
技術力の高さを徹底的にアピールする
動画の強みは、映像と解説を組み合わせて、より深く相手に理解してもらえることです。しかも実物がそこになくても、あたかも実在するかのように映像での疑似体験を可能にします。
つまり、企業と製品の技術力を見せつけるにはもってこいなのです。
参考サイト:光洋機械工業「インデックスチャック」
精密機器の中には実物の精度を、目で確認できないほど微細な製品があります。また、超高速で動いている場合、実物の優れた点がどこなのか見て分からないこともあります。
そのようなケースで動画を使うと、実物にCGを組み合わせたりすることで、実際には確認できない構造内部まで理解してもらうことが可能です。
こうした、いわゆる正統派の動画は以前からありましたが、精密機器の性能をアピールするには、最も効果的な見せ方の1つです。
特に現在のように、ナノレベルに至る微細な技術が進歩してくると、その性能を正確に伝えるには、動画が持つメリットを最大限に生かす必要があるでしょう。
あえて人間を中心にストーリーを展開する
企業の取り組みを紹介する動画では、ストーリー性を重視するパターンもあります。
確かに、オープニングでインパクトを与える動画も効果的ですが、内容に引き込まれるような動画には、その企業や製品を視聴者により深く印象づける効果があります。
参考サイト:東北精密株式会社「会社紹介」
精密機器でクライアントに知ってほしいのは、本来なら技術力の高さがいかにハイレベルかということでしょう。
そのためには徹底的に製品のすばらしさをアピールしたいところですが、あえてそこを抑えて、製品を作る人間にスポットを当てるという動画活用法も見逃せません。
この場合製品の開発や製造に関わる人物を中心に、動画全体はストーリー仕立てで進行します。
直接的に商品のメリットをアピールすることは極力抑え、視聴者の共感を引き出すことで、人間の感情を揺さぶることが、こうしたパターンの動画の目的です。クライアントが見て「いい会社だな」と思ってくれればビジネスチャンスにつながります。
純粋に製品・技術を紹介する
PR以外にも精密機器の場合、製品の操作方法や、使われている技術の解説に動画を活用できます。動画の作り方を工夫することで、PRやその他の用途に活用することもできるでしょう。
参考サイト:株式会社富士精密紹介動画
この事例の企業では、さまざまな素材を研磨する技術力をアピールするため、ナレーションや文字
テロップをあえて用いずに、作業工程を淡々と見せています。
画面からは緊張感が伝わってくるため、見る側も自然に集中してしまいます。
一切商品や業務内容については説明が入りませんが、視聴者からすると、暗黙の了解でこの企業の技術力が高いことを理解してしまうつくりになっています。
1つのポイントとしては、撮影する側も真剣で、映像そのものにセンスがあることが挙げられるでしょう。実物を使っての工程説明は、製品の操作方法の紹介にも活用できます。
求人用としての動画活用
動画を求人募集用のサポート・ツールとして使う動きが最近増えてきました。どの業界でも人材不足が課題になっている中、すぐれた人材を獲得するためには、積極的に企業のイメージを動画で伝える必要が出てきたのです。
参考サイト:株式会社コマツ「採用向け動画」
求人に応募する時に一番不安なのは、求人情報では分からない部分です。
それは主に職場の雰囲気であったり、具体的な仕事の内容であったりしますが、それを動画で確認できることは、求職者にとっては非常に大きな判断材料になります。
この場合の動画は真面目でカタいイメージよりも、社内の雰囲気がダイレクトに伝わったほうが良いでしょう。
実際に社内で働いている人物が数多く出演して、カメラの前で本音を語ってくれれば、それが最も効果的な求人用動画になるかもしれません。
動画を活用する上での注意点
動画活用する上で重要なポイントを挙げてみると、まずはターゲットを明確にすることです。どのような相手に見てもらうかが決まらないと、訴求効果の高い動画は作れません。
また、1つの動画には必ず1つのテーマを設定するようにします。相手に伝えるものが明確になっていないと、動画のPR効果が半減してしまうからです。
もう1つ大切なことは、品質にもこだわることです。
現在YouTubeを中心に、数えきれないほど多くの動画が配信されていますが、その品質は千差万別。その中で精密機器をPRする動画が素人レベルでは、イメージからかけ離れてしまいます。
決してCGを多用するような動画や、手の込んだつくりの動画にすべきと言っているのではありません。しかし精密機器を作り出す技術が感じられるような、まとまりのある動画を意識する必要はあるでしょう。
伝え方は多種多様でも、品質はハイレベルで
現代社会では、多くの人がインターネットから情報を得ています。さらに情報通信技術の進歩により、動画がますます多くのシーンで活用されるようにもなりました。
これからは、企業も戦略の1つに動画活用を加える必要が出てきています。
ここまで見てきたように、動画にはさまざまな利用法があります。しかもスマートフォンが1本あれば、誰でも簡単に動画を配信することが可能です。
しかし、だからこそ企業のPR動画は高い品質を保つ必要があるのではないでしょうか。もしも動画活用を考えているのであれば、プロによる技術サポートを受けながら、自社制作するシステムの構築をぜひ検討してみてください。