企業がYouTubeをマーケティングに活用していく上で意識しなくてはならない動画の「再生回数」。YouTubeでのマーケティングは投稿した動画を視聴してもらって初めて効力を発揮するため、まずは動画を再生して視聴してもらわなくてはいけません。
そのため、再生されていない動画はその原因を探って改善する必要がありますし、動画の再生数が全体的に低い水準にある場合は、マーケティングの取り組み方そのものを見直すべきだと言えます。
今回は、YouTubeの再生回数の仕組みに触れながら、再生回数を増やすための施策ややってはいけないことなどについて紹介していきます。
YouTube再生回数カウントの仕組み
まず初めに把握しておきたいのが、YouTubeにおける再生回数のカウントの仕組みについて。再生回数がどうカウントされているのか、その仕組みを理解しないことには正しく施策をおこなうことはできません。
YouTubeの再生回数は、ユーザーに対して表示された動画がクリックされ、動画が再生され始めたタイミングでカウントされるようになっています。
ただし、以下のような場合は再生回数としてカウントされないこともあるため注意が必要です。
・同じIPアドレスで視聴された場合
・短時間で何回も再生された場合
・動画の再生時間が極端に短い場合
同じIPアドレスからの再生をそれぞれ個別にカウントしてしまうと再生数の水増しに悪用されかねません。
また、短時間での複数回の再生や再生時間が極端に短い再生も不正につながる可能性があるため、再生回数としてカウントされにくくなっています。
再生回数を増やす方法
YouTubeに投稿した動画の再生回数を増やすためにできることはたくさんあります。
今回は、それらの施策の中でも特に効果が高く重要な施策である11の施策を紹介していきます。
動画が閲覧されるルートを把握する
再生回数を増やしたいと考えた場合、動画がどのようにしてユーザーに表示され、閲覧されるのかについても把握しておかなくてはいけません。
これはユーザーに動画をアプローチできるルートとも言えるわけですが、YouTubeでは、このルートがいくつか用意されています。
動画が閲覧される主なルートとしては、
・YouTube内での検索結果
・関連動画
・おすすめ動画
などがあげられます。
YouTubeは検索窓に特定のキーワードを入力して目当ての動画を探せるようになっており、自社の動画と関連性の高いキーワードの検索結果の上位に動画を表示させることができれば、多くのユーザーに動画を閲覧してもらえる可能性が高いため、積極的に狙っていくべきです。
関連動画は、動画を再生しているときに再生画面の下や横に表示される動画です。
他者の動画の関連動画として取り上げられることも多く、自社の動画を人気の動画の関連動画として表示させることができれば、再生回数が急増する可能性があります。
おすすめ動画は、YouTubeのホーム画面に表示される動画です。
ホーム画面に表示される動画はパーソナライズされているので必ずしもすべてのユーザーに表示されるわけではありませんが、ホーム画面に表示されている動画はユーザーの閲覧率が高いので、ここに動画が表示された場合も再生回数が急増する可能性があります。
また、Google ChromeやYahoo!など、検索ブラウザの検索結果でアプローチすることも可能です。
Google ChromeやYahoo!などの検索ブラウザは特定の検索キーワードを検索窓に入力する形で活用しますが、検索キーワードによっては検索結果に動画が表示されることがあります。
このときの検索結果に自社の動画が表示された場合も動画の閲覧につながる可能性があります。
検索ブラウザは普段YouTubeを利用しない層のユーザーも利用しているツールであるため、より多くのユーザーにアプローチできる可能性が高く、非常に魅力的です。
貴社のチャンネルをチャンネル登録してくれているユーザーに対しては新しい動画が投稿されたタイミングなどで通知がいくようになっていますが、これも動画の閲覧につながるルートの一つだと言えます。
ユーザーに求められている動画を作る
再生回数を増やしたいと考えているのであれば、再生される可能性のある動画を作らなくてはいけません。
再生される可能性のある動画とは、ユーザーに求められている動画です。
例えば、Webマーケティングのサポートをサービスとして提供している会社が、Webマーケティングの概要や方法、具体的なやり方について解説する動画と会社紹介動画をYouTubeで公開したとします。
前者は、その情報を求めているユーザーが多いので再生回数が伸びる可能性が高い動画だと言えますが、後者は再生回数を稼げるタイプの動画ではありません。
日本を代表するような大企業の会社紹介動画や業界を代表するほど有名な会社の会社紹介動画であれば検索する人も多くなりますし、再生回数も伸びるでしょう。
一方、それほど知名度が高いわけではない会社の会社紹介動画をわざわざ検索してまで視聴しようと考える人はそれほど多くありません。
この場合、会社紹介動画は数百回再生されればマシな方だと言えますが、Webマーケティングについて解説する動画は需要が高いので、うまくいけば数万回以上再生される可能性があります。
YouTubeから問い合わせや受注につなげたいと考えているのであれば、Webマーケティングについて解説する動画を投稿し、そこから問い合わせや受注につなげる方が効率的です。
もちろん会社紹介動画を用意しておくことも重要ですが、「再生回数を増やす」という目的の達成には多くのユーザーに求められているかどうかが非常に重要になってくるので、需要がある動画かどうかを意識しながら動画の制作に取り組むようにしましょう。
質の高い動画を作る
動画の再生回数を増やしたいのであれば質の高い動画を作らなくてはいけません。
YouTubeのアルゴリズムは、質の低い動画よりも質の高い動画を高く評価する傾向にあるため、質の高い動画の方がより多くのユーザーに対して露出される可能性が高くなります。
最近はYouTubeに投稿されている動画全体の質が底上げされてきているので、質の低い動画で再生回数を増やすことはまず不可能だと考えておくべきです。
質の高い動画を作りたいと考えた場合、動画の内容を洗練させることはもちろん、映像の質や音声にもこだわる必要があります。また、ユーザーが違和感なく見進められるテンポでの編集も必須になります。
チャンネルの専門性を高める
マーケティング会社がマーケティングに関する動画のみを投稿したり、インテリアショップがインテリアに関する動画のみを投稿するなど、チャンネルに投稿する動画の内容に統一性をもたせると、「〇〇専門のチャンネル」としてYouTubeに認識してもらえるようになります。
チャンネルの専門性が高まると、同時に権威性も高まり、そのテーマに関する動画を投稿したときに上位表示されやすくなったり、同じテーマの関連動画として表示されやすくなります。
また、それらのテーマに興味を持っているユーザーにおすすめ動画として表示されることも少なくありません。
チャンネルの専門性を高めることで、より動画が表示されやすくなり、再生数の増加が期待できるようになります。
VSEOを意識する
YouTubeで再生回数を稼ぐ場合、VSEO対策も必須になります。VSEOとは、動画コンテンツにおけるSEO対策を指す言葉です。
YouTubeの検索結果で自社の動画を上位表示させるためにおこなう施策や、関連動画やおすすめ動画に動画を表示させ、露出を増やすための施策を総称して「VSEO」や「VSEO対策」と呼びます。
VSEOでおこなわれる施策はいろいろありますが、代表的なものとしては「動画のタイトルや概要文に対策したいキーワードを含める」などがあげられます。
また、先程紹介したチャンネルの専門性を高める施策や、この後紹介するクリック率を向上させる施策もVSEOの一種です。
クリック率を向上させる
ここまで紹介してきた施策を意識してYouTubeの活用に取り組むと、多くのユーザーに対して動画が表示されるようになります。
ただ、いくら動画の表示回数が増えたとしても、実際に動画を閲覧してもらえなくては意味がありません。そこで重要になるのが、クリック率を向上させるための施策です。
再生回数は、動画をクリックしてもらい、再生してもらって初めてカウントされるような仕組みになっているので、いかに動画をクリックして視聴してもらうかが重要になるわけです。
クリック率を向上させたいと思った場合、思わずクリックしてしまいたくなる魅力的なタイトルやサムネイルを設置するという施策が定番で、最も効果的です。
再生リストを活用する
YouTubeには、チャンネルにアップされている動画から任意の動画をピックアップしてリスト化する「再生リスト」と呼ばれる機能が備わっています。
この再生リストの活用も、再生回数を増やすのに効果的な施策の一つです。
Webマーケティングのサポートをおこなっている企業が、
・オウンドメディアを活用するコンテンツマーケティング
・各種SNSを活用するSNSマーケティング
・動画コンテンツを活用する動画マーケティング
など、さまざまなマーケティング方法に関する動画を複数制作し、自社のチャンネル内で公開していたとします。
この場合、コンテンツマーケティングに関連する動画はコンテンツマーケティングの再生リストにまとめておいた方が親切ですし、SNSマーケティングに関する動画はSNSマーケティングの再生リストにまとめておいた方が親切です。
YouTubeは、UIの性質上、チャンネルで公開されている動画が増えれば増えるほど目当ての動画を探すのが大変になる傾向にあります。目当ての動画を探せずに離脱してしまうユーザーも少なくありません。
再生リストを活用してテーマごとに動画がまとめておけば、そういったユーザーの離脱を防げるようになりますし、より多くの動画に目を通してもらいやすくなります。
終了画面を活用する
再生回数の増加につながる機能でありながら意外と活用できていない企業が多いのが、動画の終了画面です。
YouTubeで動画を公開する場合、動画の最後に5〜20秒の終了画面を設けることができます。
この終了画面では、
・チャンネル内の他の動画へのリンクの設置
・再生リストへのリンクの設置
・チャンネル登録を呼びかけるボタンの表示
などを設定することが可能です。
つまり、他の動画の視聴やチャンネル登録につなげられる非常に便利な機能というわけです。終了画面は、再生回数を増やす上で非常に有効な機能だと言えるので、必須で活用しておきたいところです。
闇雲に設定しても効果は出ませんが、関連性の高い動画へのリンクを設置するなど正しく活用することができれば再生回数の増加に大きく貢献してくれます。
ショート動画を活用する
2022年の12月時点で最も勢いがあり、YouTube側も力を入れているのが「ショート動画」です。YouTubeのショート動画とは、InstagramやTikTokと同じ縦型の動画で、再生時間も最大で60秒とかなり短かめに設定されています。
そのため、使い方や使い所が難しいという側面はあるものの、YouTubeが積極的に露出してくれる動画でもあるため、上手く活用できれば再生回数を一気に増やせる可能性を秘めています。
企業が活用する場合、ショート動画を予告編やダイジェスト編として活用し、本編の再生につなげるという形での利用が多くなっています。
チャンネル登録者を増やす
「再生回数を増やしたい」と考えた場合、つい動画の再生回数を増やすための仕掛けにばかり気を取られてしまいがちですが、チャンネル登録者を増やすことも意識するべきです。
チャンネル登録してくれたユーザーには、そのチャンネルで新しい動画が公開されたときなどに通知がいくようになっています。通知がいったからと言って必ずしも再生してもらえるわけではありませんが、再生につながる可能性は大いにあります。
他の媒体から誘導する
動画の再生回数を増やしたいのであれば、他の媒体の活用にも積極的に取り組むべきです。代表的な方法としては、Webサイトに動画を埋め込む方法やSNSにダイジェスト版の動画を投稿して本編の再生につなげるなどの方法があります。
YouTube内のユーザーだけで再生回数を増やす方法に限界を感じる場合、他の媒体を活用したり誘導することで現状を打破できる可能性があります。
再生回数を増やすためにやってはいけないこと
YouTubeをマーケティングに活用したいと考えている企業の中には、「再生回数を増やしたい」という思いが先行するあまり、やってはいけないことをしてしまうことが多々あります。
再生回数を増やすためにやってはいけないこととしては、
・自分で何度も動画を視聴する
・金銭を支払って他者に再生してもらう
・その他の動画と関連性の低い動画を投稿する
などがあげられます。
これらの行為をおこなってしまうと、再生数が稼げるようになるどころか、アカウントの評価を著しく下げてしまったりアカウントを凍結されてしまったりしてしまいかねません。
それぞれの行為について詳しく解説していきます。
自分で何度も動画を視聴する
再生回数を増やしたいからと言って自分で何度も動画を視聴するのは避けるべきです。
「PCのF5キーを何度もクリックしてページをリロードすることで再生回数を簡単に増やせる」などとうたっているWebサイトもありますが、そのような行為は不正行為としてYouTube側に認識される可能性が高くなっています。
先述したとおり、YouTubeはIPアドレスを再生回数の一つの指標としているため、同じIPアドレスから短時間に何度も同じ動画へのアクセスがあるなど、おかしな動きがあると、不正がおこなわれていると認識されてしまう可能性があります。
また、F5キーでリロードして動画を再生すると、短時間で動画を離脱することになるので、動画の評価にも悪い影響をあたえる可能性もあります。
金銭を支払って他者に再生してもらう
YouTubeにおける代表的な不正行為の一つとして、「金銭を支払って再生回数を水増しする」というものがあります。
YouTubeには短期間で急激に再生回数が伸びている動画を急上昇動画として取り上げるような仕組みがありますが、この急上昇動画に取り上げられると多くのユーザーに動画をリーチできるようになります。
この急上昇動画に掲載してもらうため、金銭を支払って動画を再生してもらい、動画の再生回数を水増ししようとする投稿者がいるわけです。実際、再生回数を販売している業者もいます。
ただ、そういった動画に対してはYouTube側のチェックが入り、不正がおこなわれたと認められると、動画の削除やアカウントの凍結などの処置がほどこされるようになっています。
他者に金銭を支払って再生回数を水増しする行為はYouTubeの利用規約にも記載されている禁止行為なので、絶対におこなわないようにしましょう。
その他の動画と関連性の低い動画を投稿する
投稿した動画の再生回数が思うように伸びない期間が続くと、再生回数だけを追って、チャンネルにアップされている動画と関連性の低い動画を投稿してしまいがちですが、関連性の低い動画を投稿するのはおすすめできません。
なぜなら、YouTubeは、チャンネルに投稿されている動画の内容や関連性もチェックしており、評価の基準の一つとして活用しているからです。
例えば、インテリアに関連する動画だけをアップしているチャンネルはインテリアの専門性・権威性の高いチャンネルとして評価されるようになり、インテリア関連のキーワードで上位表示されるようになります。
また、他のチャンネルのインテリア系動画の関連動画にも掲載される可能性が高くなり、後々再生数が大きく伸びる可能性があります。
一方、これまでインテリアに関連する動画のみを投稿していたチャンネルでエンタメ系の動画や政治関連の動画などこれまでの動画とまったく関連性がないテーマの動画を投稿するようになると、YouTube側がチャンネルのジャンル選定に悩むようになり、どのジャンルのキーワードでも上位表示されづらくなってしまうので注意が必要です。
YouTubeの再生回数と広告収益の仕組み
企業がYouTubeをマーケティングに活用する場合、動画から自社製品の購入やサービスの利用につなげて収益化するのが一般的です。
ただ、YouTubeには、動画に広告を掲載してマネタイズするという方法もあり、実際に広告収入を得ている企業も少なくありません。
YouTubeをマーケティングに活用しつつ広告収益も得たいと考えているのであれば、YouTubeの再生回数と広告収益の仕組みについてしっかりと把握しておくべきです。
まず把握しておきたいのが収益化の条件について。YouTubeのアカウントが収益化の条件を満たすと、動画に広告を掲載できるようになり、収益を得られるようになります。
収益化の条件は、以下のとおりです。
・チャンネル登録者1,000人以上
・直近12ヶ月の動画の総再生時間が4,000時間以上
広告を掲載することによって得られる収益は表示される広告のジャンルによって異なるため一概に「〇〇円」と言い切ることはできませんが、1再生あたり0.1円が平均値とされています。
ただ、YouTubeの広告にはいくつか種類があり、表示されるだけだと収益につながらないタイプの広告もあるため、必ずしも1再生あたり0.1円になるわけではないので注意しましょう。
まとめ
YouTubeの再生回数の仕組みや再生回数を増やす方法、再生回数を増やす上でやってはいけないことなどについて詳しく解説してきました。
企業がマーケティングにYouTubeを活用していく上で、再生回数は非常に重要な指標になります。そのため、その仕組みや再生回数を増やす方法についてはしっかりと把握しておくべきです。
また、規約で禁止されているような行為をおこなってしまうと、動画だけでなくチャンネルの評価にも悪い影響を及ぼしてしまいかねませんので、そういった行為は避けるようにしましょう。