企業の動画活用は年々盛んになっている
冒頭でも触れたように、企業の動画活用は年々盛んになっています。同じく電通が行った調査によると、2020年は3,862億円だった動画広告市場は、わずか3年でおよそ倍近い6,860億円になりました。
さらに、大手携帯キャリアが
5Gサービスの提供を本格的に開始したり、対応端末が普及したりしたあかつきには、ユーザーの動画視聴をとりまく環境もガラリと変わるでしょう。このように、企業の営利活動において、動画の存在は決して無視することのできないほど大きなものになっています。
企業が動画活用を行うメリット
動画コンテンツは、テキストや画像では伝えきれない情報を短時間で分かりやすく伝えられるため、多くの企業が積極的に動画を活用しています。ここでは、企業が動画を活用することで得られるメリットを詳しく解説します。
多くの情報を短時間で伝えられる
動画の最大の強みは、短時間で多くの情報を伝えられる点です。視覚・聴覚の両方を使って情報を伝えられるため、テキストや画像よりも直感的に理解しやすく、視聴者の記憶にも残りやすい特性があります。
例えば、商品の説明を動画で行う場合、文章では伝わりにくい使用感や動作を映像で示すことで、ユーザーは簡単にイメージをつかめます。特に、複雑な機能を持つ製品や新しいサービスの紹介には、動画が最適です。
ブランディングを強化できる
企業が動画を活用することで、ブランドイメージを視聴者に強く印象付けることができます。テキストや画像だけでは伝えきれない企業の理念や世界観を、映像表現によって感覚的に伝えられるため、ブランドの認知度や好感度向上につながります。
例えば、BtoB企業において、社長や社員が自社のミッションを語る動画を活用することで、企業文化やビジョンを伝えやすくなります。顧客や取引先に対して信頼感を醸成し、競合との差別化を図る手段としても有効です。
業務の効率化につながる
動画は、社内研修や業務マニュアルとしても活用でき、業務の効率化に貢献します。従来の研修では、講師が一度に多くの社員を指導する必要がありましたが、動画を活用すれば、いつでもどこでも同じ研修を受講できるため、コスト削減と学習効率の向上が実現します。
例えば、新人研修の動画を作成すれば、入社するたびに同じ説明を繰り返す必要がなくなります。また、製造業やサービス業では、作業手順を動画でマニュアル化することで、業務の属人化を防ぎ、新人でも短期間で業務を習得できるようになります。
採用活動に活用できる
採用活動においても、動画は効果的なツールとして注目されています。求職者は企業のホームページや採用サイトを閲覧する際、実際の職場の雰囲気や働く社員の様子を知りたいと考えます。動画を活用することで、社内のリアルな環境を伝え、求職者の不安を解消し、応募意欲を高めることができます。
例えば、社員インタビュー動画では、仕事のやりがいや企業の魅力を現場の社員が語ることで、求職者にとって身近でリアルな情報を提供できます。また、オフィスツアー動画を作成すれば、働く環境を事前に知ることができ、企業文化への理解が深まります。
目的別にみる企業の動画活用事例
では、実際に動画はどのように活用されているのでしょうか。ここでは採用や商品の購買など4つの目的に分けて、実例とともに動画活用の実態をご紹介します。
認知度アップを目的とした活用事例
まずはじめに、製品やサービスの認知度アップを目的とした事例をご紹介します。より多くの人に視聴してもらおうと奇をてらったり、伝えたい情報を詰め込みすぎたりしないことがポイントです。
例えば、モリテックスチール株式会社のルームハンガーのプロモーション動画は商品の伝え方が秀逸でよい手本になります。
わずか2分の短い動画ながら、実際にルームハンガーを使う様子を映像で見せることで、その利便性をコンパクトに伝えています。このように実際に使う様子を見せることが効果的な商材は、動画でのプロモーションが効果的でしょう。
ブランディング目的とした活用事例
企業や製品のブランディングを目的とした動画の活用も活発です。テキストだけでは十分に伝えきれない想いや温度感を、ユーザーに端的かつ魅力的に伝える動画が多く見受けられます。
例えば、カンロ飴で知られるカンロ株式会社は、創業105年を機にコーポレートアイデンティティを刷新しました。その際に、ブランディングムービーを公開しています。
対外へのブランディングを目的として動画を制作する際には、動画のコンセプトとターゲットをあらかじめ明確にすることが大切です。
企画者や一部の社員だけが満足する動画では意味がありません。誰に何を伝えたいのか、そしてどのような動画であれば伝わるのか丁寧に検討しましょう。
採用を目的とした活用事例
動画は、人材採用促進を目的としても積極的に活用されています。採用促進を目的として動画を活用する場合には、視聴者自身がその会社で働いているシーンを想像できるような動画が好まれます。実際、
採用動画の多くは、社風やそこで働くひとのリアルな様子にフォーカスしたものが多いです。
例えば、カミソリなどの刃物や調理用品を販売している貝印株式会社では、さまざまな部署の社員が自身の仕事とそれに対する誇りについて語る動画を公開しています。
この動画は、
新卒採用ページの冒頭にも埋め込まれており、貝印に関心を持った人に採用エントリーしてもらえるよう後押しする役割を担っていると推測できます。
購入・会員登録促進を目的とした活用事例
動画は、商品の購入や会員登録の促進にも適しています。WEBページと比べて圧倒的な効率で情報を伝達できる動画は、新しい商品の利便性や魅力を効果的に伝えるのに最適です。
例えば、株式会社マネーフォワードが提供するアプリ「マネーフォワードME」の動画は、アプリのダウンロードをゴールに据えて1分間でその魅力を伝えています。
動画を通じて実際に商品を購入してもらったり、会員登録してもらったりするには、動線設計が大切です。関心を持ったユーザーがすぐに行動を起こせるよう、概要欄にURLを記載したり動画内で行動を促したりしましょう。
企業の動画活用を成功させるための3つのポイント
ここからは、企業の動画活用を成功させるためのポイントを3つご紹介します。他の広告施策と同じく、事前にどれだけ準備できるか、また、リリース後にどれだけ手厚く改善に取り組めるかが動画活用の成否を分けます。
動画によってどのような効果を得たいのか明確にする
何よりも大切なことは、動画によってどのような効果を得たいのか、つまり「目的」をあらかじめ明確にしておくことです。ここまでご説明したように、動画は採用促進から販売促進まで幅広い用途で活用できるたいへん「便利」なツールです。その便利さに翻弄されないためにも、目的を定めなければなりません。
目的が定まったら、それを達成するために何を指標にすべきか考えましょう。動画の再生回数なのか、視聴完了率なのか、はたまた動画広告を経由して自社のサイトを訪れたユーザーの数なのか。すべてを満たす必要はありませんが、成果を出すためには”目印”となる指標が必要です。
目的に合わせた掲載媒体を選ぶ
目的が決まったら、それに合わせた掲載媒体を選定していきましょう。せっかく目的が明確に定まっていても、その目的とそぐわない媒体に動画を掲載しても望んだ成果は得られません。
やや極端な例えですが、中年以上の男性を主な顧客とする育毛剤メーカーが、ティーンエージャーに支持を集める
動画SNS「TikTok」に広告を出稿しても思うような成果は得られないでしょう。
このように、広告をどこに掲載するかは成果に直結します。広告媒体を選ぶ際には、主な利用ユーザー層と広告配信の設定をどれくらい詳細に設定できるかの2点を基準にしつつ、丁寧に比較検討することが大切です。
効果測定と改善を行う
動画がもたらす効果は強大ですが、それは継続的な効果測定と改善によってなされます。「動画を作ればあとは成果がついてくるだろう」と楽観視するのではなく、ユーザーの声に真摯に耳を傾けましょう。動画が何回再生されて、どれだけの人が最後まで見てくれたのか知りましょう。
そうして浮き彫りになった課題をもとに、広告設定をチューニングしたり次回施策に活かしたりすることではじめて動画は効果を発揮します。
動画活用を成功させるためには、このように継続的な効果測定と改善が必要なことをあらかじめ理解していただけると幸いです。
目的をきちんと定めて動画を活用しよう
当然のことですが、動画を使うことが目的になってはなりません。動画の活用を成功させるためには、動画視聴を経てユーザーにどういった行動を起こしてもらいたいのか目的をあらかじめ明確にすることが大切です。
そして、効果測定と改善も欠かすことはできません。ユーザーの声や動画を経由した売上をもとに、根気強く改善に取り組みましょう。
まずはロールモデルになりそうな先行事例を探して、どのように動画を使えば自社の課題を解決したり売上を拡大したりできそうか考えることから始めてみてはいかがでしょうか。